英会話クラスだより +

植物: バージニアヅタ

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンの窓から見える景色についての続きです。


東側の窓からは、左の方の果樹畑に生えている満開の花で白くみえる桜の木と、小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキも見えたが、窓は絡みあったの緑で縁どられていた。


この一文の中に描写されている植物、「桜」「カバノキ」「蔦」を順番に解説しています。

今回は、「蔦」だったのですが、原文では”a tangle of vines” としか書いていません。
正確に言うと”vine(s)” は、ツル性の植物(climbing plants) のことをいい、分類学上の植物に結び付けるのは非常に困難です。
シダ植物、裸子植物、被子植物すべてに存在し、被子植物でも単子葉植物、双子葉植物のどちらにもそれぞれの種があります。

“vine” は、もともと”grapevine” でしたから、ブドウ科のツル植物と考えるのが妥当かもしれません。
そうすると、候補には、

  • ブドウ属
  • ノブドウ属
  • ヤブガラシ属
  • ツタ属

がありますが、ヤブガラシ属はツルをあまり伸ばさないので窓を縁取るには不向きです。

また、例によってアメリカ農務省のデータベースからは、候補の中でプリンス・エドワード・アイランドで自生するツル植物は、

  • バージニアヅタ
  • アメリカブドウ

です。
(ただし、今回はヒットしないデータもあったので漏れがあるかもしれません)

アメリカブドウは栽培種のブドウの母親の様な存在で、様々なブドウを産み出しています。果樹作物として育てるべきもので、家の壁に這わせるものではありませんね。

ということで、グリーン・ゲイブルズの家の壁を這っているツル植物”vine”はバージニアヅタである確率が高いです。
バージニアヅタのイメージは日本人の大多数にとっては「蔦」で十分伝わると思われます。片仮名の方が受け入れやすければ「ツタ」で統一するのがいいかもしれませんね。

アンにとっては、部屋の窓までのびているなら、アメリカブドウの方が良かったかもしれませんね。

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: オウシュウシラカンバ

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンの窓から見える景色についての続きです。


東側の窓からは、左の方の果樹畑に生えている満開の花で白くみえる桜の木と、小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキも見えたが、窓は絡みあった蔦の緑で縁どられていた。


この一文の中に描写されている植物、「桜」「カバノキ」「蔦」を順番に解説しています。
今回は、「カバノキ」です。

カバノキは少し乱暴すぎたかもしれません。
カバノキは属の名前で、カバノキ属の品種は約40種類あります。
今ままでは100種類以上の品種がある属を調べなければならなかったので、調査が容易な予感がしました。

例によって、アメリカ農務省のデータベースによると、プリンス・エドワード・アイランドに自生してるカバノキ属には6品種あります。

  • キハダカンバ
  • アメリカシラカンバ
  • オウシュウシラカンバ
  • グレーバーチ
  • ベツラ・ナナ
  • ブルー・バーチ(和名はありません。アメリカシラカンバとグレーバーチの交雑種です)

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見えるのは、「小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキ」です。
「ほっそりとした (原書では”slender”)」というイメージからかけ離れているのは、幹の直径が80cmにもなる「キハダカンバ」(樹高20m)「アメリカシラカンバ」(樹高18m)と灌木であるベツラ・ナナ(樹高1~4m)です。

すると、残るのは、オウシュウシラカンバとグレーバーチ、ブルーバーチです。
オウシュウシラカンバは樹高15~25m、幹径40cm。
グレーバーチは樹高7~9m、幹径30cm
ブルーバーチは、アメリカシラカンバとグレーバーチの交雑種で、学問的資料は不足して正確なところはわかりません。ただ、写真で見る限りは細いのですが、樹形は灌木に近いものがあり、「ほっそりとした(slender)」という表現にはふさわしくないと思われます。

さて、オウシュウシラカンバとグレーバーチ。
ここで迷いましたが、グリーン・ゲイブルズが農家であることを考えると、役に立たない木よりは価値のある木を植えるはずだと考えました。
すると、圧倒的にグレーバーチに軍配が上がったのです。
グレーバーチは害虫にも強く、高品質の材木が取れ、家具にも使い、太鼓の胴や糸巻き、薪にも使います。価値のある木なのです。

一方、オウシュウシラカンバはというと、確かに有用な木なのですが、どちらかというと農家に少し育てるような種類ではなく、森林を育て材木やパルプの原料として使われるもののようです。ただ、樹液からお酒も作れますし、また、皮をなめすのにも使われたりします。

・・・グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見える木はグレーバーチ!となるところでしたが、どんでん返しがありました。

「小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキ」

原文では、”nodding” と使われています。初めは風に揺られていると思っていたのですが、いくら細い木でも幹が揺らすような風は相当強いですね。でも、レイチェル夫人がやってくるときには風の話など全くありません。そこで、「ああ、このカバノキは樹高20mくらいで上空に強い風が吹いているのだな」くらいに思ったのですが、良く考えるとまだ座ってもいないレイチェル夫人が20mの木を見上げるにはよほど窓の近くにいるか、ずっと離れた所にカバノキが生えているはずです。でも、そのどちらも想像しにくい情景なのです。

そうこうするうちに目にとまった記述が、「オウシュウシラカンバの樹冠の枝はアーチ状で、小枝は垂れさがっている」でした。
これなら、小枝が微風に吹かれて頷くように揺れ動くことも想像できます。
なおかつ、オウシュウシラカンバは、庭の装飾用に植えられることもあるようです。美しい幹のためですね。ちなみに、英語では”silver birch”といいます。
(オウシュウシラカンバの学名は、”Betula pendula” です。もっと早く気がつくべきでした。)

これで、グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見えるカバノキはオウシュウシラカンバではないかと曲がりなりにも想像はつきましたが、肝心な物語の訳語は・・・・?

シラカンバでいいのではないかと思います。オウシュウシラカンバは日本人が良く見るシラカンバとは近似種で、見た感じも良く似ているからです。
シラカンバを思い浮かべながら物語を読み進めていくのに何の支障もないでしょう。シラカンバとシラカバはどちらでもいいようですが、そこは物語全体を考えた上での翻訳者の力量と好みに左右されそうです。

アンならなんというでしょうか?
美しいものが好きなアンはシラカンバを喜んでくれると思います!
「私はカバノキはみんな好きなの。でもシラカンバが一番好きだわ! だって白くて美しいんですもの。銀のカバノキという名も高貴で女王様のようだわ。そう思いません?」

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: スミミザクラ

さて、レイチェル・リンド夫人はマシューの謎を探るため、グリーン・ゲイブルズにやってきます。
マシューの妹のマリラにマシューが出かけた理由を聞きにきたのです。
マリラはダイニング・キッチンにいたのですが、勝手知ったるリンド夫人は裏庭を通ってやってくると裏口をノックして、返事を待ってはいります。
そこで、ダイニング・キッチンから見える外の様子が描写されます。


東側の窓からは、左の方の果樹畑に生えている満開の花で白くみえるの木と、小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキも見えたが、窓は絡みあった蔦の緑で縁どられていた。


この一文の中に描写されている植物、「桜」「カバノキ」「蔦」を順番に解説します。

まずは「桜」です。

アメリカ農務省によるとプリンス・エドワード・アイランドに生育している桜は3品種あります。ちなみにサクラ属には6亜属あり合わせて約100品種が存在がします。
その中で、プリンス・エドワード・アイランドに生育している桜は次の3品種:

  • スミミザクラ
  • ピン・チェリー
  • チョーク・チェリー

です。
かなり絞り込めました。

この桜はグリーン・ゲイブルズの果樹畑に生えています。サクランボをとるためですね。
すると、ピン・チェリーが候補から消えます。

3つのサクラの木は、どれも食用に適したサクランボを実につけますが、ピン・チェリーは昔から商用の価値はありません。あくまでも、自家用にジャムやジェリーや保存食を作るのに使われます。

これに対して、チョーク・チェリーは先住民の時代から貴重な食料源でした。ジャムやジェリーやシロップに使われます。ただし苦いので、かなりの砂糖を必要とします。
スミミザクラもその実は重用されます。英語では酸っぱいチェリー(sour cherry) というのですが、スープや豚肉料理、タルト、パイなどのデザート、リキュール、ドリンクなど何でも来いです。人によっては生で食べる人もいます(すっぱいですが)。

それでは、チョーク・チェリーか、スミミザクラかという事ですが、軍配はスミミザクラに上がりそうです。
満開の花で白くみえる桜だからです。

実はチョーク・チェリーやピン・チェリーは、花が咲いても満開で木全体が白く見えることはありません。(写真では3品種とも花をつけています)
やはり、ソメイヨシノと同じサクラ亜属のスミミザクラがグリーン・ゲイブルズの果樹園のサクラでしょう。

「桜」と読んで「ソメイヨシノ」を連想してもスミミザクラから大きくかけはられることはありませんが、やはり果樹という観点から考えると、少なくとも言葉の面では「スミミザクラ」とした方が良いのかもしれません。

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: セイヨウハコヤナギvs.ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシスvs.ポプラ

グリーン・ゲイブルズの裏庭に、柳に向かい合うように反対の端に並んで生えているもう1種類の木は、セイヨウハコヤナギです。


裏庭は、一面緑におおわれ、きれいに細かなところまで手入れされ、片側には年老いた何でも知っているような大きな柳の木が並び、もう一方には上品に澄ましたようなセイヨウハコヤナギが列をなしていた。


セイヨウハコヤナギは、いわゆるポプラなのですが、これが曲者です。
『グリーン・ゲイブルズのアン』の原書では、”Lombardies”という単語で表現しているのですが、グリーン・ゲイブルズの裏庭に生えているポプラはセイヨウハコヤナギではありません。
『グリーン・ゲイブルズのアン』の”Lombardies”は、セイヨウハコヤナギではありえないのです。

ちなみに、セイヨウハコヤナギは、Populus nigra という学名の「ヨーロッパクロヤマナラシ(クロポプラ)」を、17世紀にイタリアのロンバルディアで改良した栽培品種(改良ポプラ)です。ですから、「ヨーロッパクロヤマナラシ・イタリカ (Populus nigra ‘italica’)」 と呼ぶのが正しいのですが、日常の生活の中でリンネの命名法を意識することはできませんね。そのため、このポプラは「ロンバルディー」と呼ばれていました。この「ロンバルディー」は、雄株しかないので、種子による栽培はできません。
また、品種改良をした場所から想像がつくように、この地中海気候で開発された栽培品種は、暑くて乾燥した土地に適しています。したがって、残念ながらカナダの気候には適していません。

ところが、このポプラ(ヨーロッパクロヤマナラシ・イタリカ=セイヨウハコヤナギ)は、「本物のロンバルディー(true Lombardy)」と呼ばれるようになります。
「本物」とわざわざつけて呼ばれるのは、類似種がでてきたからです。
このあらたにでてきた類似種がグリーン・ゲイブルズの裏庭に生えている「ロンバルディー」です。

カナダに育つ「ロンバルディー(Lombardies)」ポプラは、「大西洋クロポプラ(Populus nigra betulifolia)」というクロポプラの亜種とクロポプラの栽培品種である「本物のロンバルディー=セイヨウハコヤナギ」を掛け合わせた「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス(Populus nigra Plantierensis)」と呼ばれる一群の栽培品種の一つです。
「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、1884年にフランスのメスの近くで開発されました。
フランスのメスは北緯49°です。日本の最北端が北緯45°くらい、プリンス・エドワードの最北地でも北緯47°くらいですから、緯度的には十分クリアしています。ただし、メスの気候はマイルドで氷点下になることはあってもカナダのようには寒くなりませんが。
けれども、「本物のロンバルディー・ポプラ(true Lombardy)」は、湿度が高く寒冷な北西ヨーロッパには適していませんが、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、適しており、イギリスやアイルランドでは「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランチェーレンシス」を「ロンバルディー・ポプラ」と呼び生育しています。「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、セイヨウハコヤナギに似ています。ですが、雌雄異株でセイヨウハコヤナギに比べて樹形に幅があります。

それでは、グリーン・ゲイブルズの裏庭にセイヨウシロヤナギと向き合って生えている木はなんて呼べばよいのでしょうか。
「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」でしょうか。それとも定説になっている「セイヨウハコヤナギ」でしょうか。

この場合は単純に「ポプラ」良いのではないかと思います。
物語の情景をすぐに思い浮かべるためには、日本人にとっては「ポプラ」で十分でしょう。
写真を比べてみると、日本人が「ポプラ」と聞いて思い起こすのは、「セイヨウハコヤナギ」よりも、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」だと思います。

(但し、日本語のWikimedia の「セイヨウハコヤナギ」には、2012年6月現在で間違えて「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」の画像を使っています。もともと元データが間違っていたのですが、訂正されたのに気づいていないのでしょうね。このWikimedia の印象を持っている方には印象しにくいかもしれませんが。)

そして、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」も「セイヨウハコヤナギ」も外見的には似た印象があります。物語の情景を思い浮かべるにはいたずらに正確を期する必要はないと思います。
また、向かい合う木がヤナギなので「セイヨウハコヤナギ」では直観的には対比しにくいですし、文学的にも同じ言葉は使いたくないですよね。

アンならなんというでしょう?

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: セイヨウシロヤナギ

マシューの謎の行動のために、心をかき乱されたレイチェル夫人は、真相を確かめにお隣のグリーン・ゲイブルズをたずねます。
マシューと一緒に住んでいるマリラに問いただすためです。
「問いただす」というのは、少し大げさな表現かもしれませんが、レイチェル夫人は何でも知らないと気がすまない人なのです。内心はそんな感じだったことはありそうです。

さて、グリーン・ゲイブルズに行くのに、レイチェル夫人は、初めは玄関へと続く道を歩いていましたが、近道をしてマリラの家の裏庭を通って行きます。
裏庭の様子が描写され、住人の性格がそこから読み取れます。
その裏庭の片側には柳が列をなし、反対側にはセイヨウハコヤナギが並んでいます。


裏庭は、一面緑におおわれ、きれいに細かなところまで手入れされ、片側には年老いた何でも知っているような大きなの木が並び、もう一方には上品に澄ましたようなセイヨウハコヤナギが列をなしていた。


この「柳」と「セイヨウハコヤナギ」が曲者です。

まず、「柳」です。

日本人のほとんどの人は「柳」と聞くとシダレヤナギを思い浮かべると思います。水辺に枝を幽霊のように垂れて、時々は幽霊もお伴をするあの「柳」です。このシダレヤナギは、学名を Salix babylonica といい、実はプリンス・エドワード・アイランドには生育していません。
柳はヤナギ属に属の品種は100種以上にも及びます。その中で、プリンス・エドワード・アイランドに自生しているのは、15品種だけです(アメリカ農務省のデータによる)。

グリーン・ゲイブルズの裏庭に並んでいる柳は、「年老いた何でも知っているような大きな柳」です。原文では”great patriarchal willow” ですから、どっしりした家長的な感じのする柳なのでしょう。
したがってある程度大きな柳を15品種の中から選ぶと2品種が「候補」に残ります。
クラックウィローとセイヨウシロヤナギです。どちらも、10m以上になりクラックウィローは、20mまで、セイヨウシロヤナギは、30mまで高くなります。
向かい側にそびえているセイヨウハコヤナギの樹高も20~30mだという事を考えると、ちょうどつり合う高さだということになります。
クラックウィローとセイヨウシロヤナギは幹の直径が1mにもなるので、堂々とした「家長的な威厳」を示すにはぴったりです。
残りの品種は、高いものでせいぜい10m、でなければ灌木です。(公正な記述のために: 調べきれていない品種もあります。)

それでは、クラックウィローとセイヨウシロヤナギのどちらの柳だったかというと、「セイヨウシロヤナギ」だったのではないかと思われます。
グリーン・ゲイブルズの裏庭の描写で、住人の性格がある程度読み取れると書きましたが、グリーン・ゲイブルズの住人は2人で、裏庭の木もそれぞれこの2人を投影していると思われます。
マリラは、何にでもきちんとしている人で、身なりもきちんとしています。マシューは、内気ですが心に決めたら動かないところがあり、髪の毛は肩まで垂れ、肩は少し内側に曲がっています。
「セイヨウハコヤナギ」は、まっすぐに生えるスリムな木ですから、マリラに良く似合っています。
クラックウィローとセイヨウシロヤナギのどちらが、マシューに似ているかといえば、どうみてもセイヨウシロヤナギですね。
ただ、セイヨウシロヤナギはクラックウィローに比べて列に並べにくそうなのが難点です。

謎の「セイヨウハコヤナギ」については次回解説します。

でも、これで、グリーン・ゲイブルズの裏庭には、「セイヨウハコヤナギ」の列と「セイヨウシロヤナギ」がそれぞれ列をなして両側に生えていることがわかりました。想像力を働かせすぎたでしょうか。

アンならこういうかもしれません。
「想像力を働かせたの。セイヨウハコヤナギがマリラで、セイヨウシロヤナギがマシューだなんて、なんて素敵なの。そう思いません?」

植物: フクシア・マゲラニカ

フクシアは、もともとは南米(一部は中米やポリネシア)の熱帯・亜熱帯原産の植物です。
当然、なぜカナダにそんな植物が育っているんだという疑問が起こります。
フクシア属の花は100以上の品種を誇ります。その中で、耐寒性の強いものがフクシア・マゲラニカです。

プリンス・エドワード・アイランドから大西洋をはさんだアイルランドのウエスト・コークという町は、フクシア・マゲラニカが町の花になっているほど多く自生しています。ウエスト・コークの人達は、この外来種の花は大西洋をわたって流れ着いたのだと思っています。真偽のほどはわかりませんが。
大西洋の先は、当然カナダでプリンス・エドワード・アイランドもその一部です。

そうはいっても、フクシア・マゲラニカは氷点下では生存できないようなので、カナダの冬は越せそうにはありませんが、現在の所、最有力のフクシアです。物語の中では、「フクシア」という言葉は使われてはおらず、「レディーズ・イアドロップス」と呼ばれています。貴婦人のペンダント形イアリングという意味です。そして、アイルランドのウエスト・コークの町でも「レディーズ・イアドロップス」と呼ばれているフクシアがフクシア・マゲラニカなのです。

それでは、氷点下の冬のプリンス・エドワード・アイランドに本当に咲いているのか・・・?

残念ながら、今のところはわかりません。
真実は、アンが言うであろうように「想像力で補う」しかないのでしょうか。


レイチェル・リンド夫人が住んでいるのは、ちょうどアボンリーの大通りを下って少しくぼ地になっている、ハンノキとフクシアに囲まれているところで、カスバートの森から流れ出ている小川が横切っていた。


「フクシア・マゲラニカ」は3mくらいの高さに育つ灌木ですが、霜が降りるようなところだと、その半分の高さくらいにしか育たないようです。
大人の背よりも少し低いくらいのフクシアがレイチェル夫人の住んでいたあたりを囲むように育っていたのでしょうか。

植物: スペックルド・オルダー

『グリーン・ゲイブルズのアン』の一番初めにでてくる名誉ある植物です。


レイチェル・リンド夫人が住んでいるのは、ちょうどアボンリーの大通りを下って少しくぼ地になっている、ハンノキとフクシアに囲まれているところで、カスバートの森から流れ出ている小川が横切っていた。


「ハンノキ」というのが実は「スペックルド・オルダー」です。

「ハンノキ」も「スペックルド・オルダー」も同じハンノキ属の品種なのですが、「ハンノキ」は、日本、朝鮮半島、ウスリー、満州に分布するハンノキ属で、日本では全国の山野の低地や湿地、沼に自生します。

一方、「スペックルド・オルダー」は、北米北東部に分布するハンノキ属で、プリンス・エドワード・アイランド州ではふつうにみられます。ただし、ハンノキ属の品種グレー・オルダーの亜種なので、「ハンノキ」から見ると、兄弟や姉妹ではなくて、甥や姪にあたります。

「ハンノキ」と聞いてすぐにイメージができる人は少ないと思います。
それならば、「スペックルド・オルダー」の写真を参考にしてどんな場所にレイチェル夫人が住んでいたか想像して下さい。あきらかに、「ハンノキ」とは見た目が違います。
樹高はどちらも15~20mとほぼ同じですが、「スペックルド・オルダー」は、もっとこんもりとしていますね。そんなところの近くにレイチェル夫人は住んでいました。

後の風景は、アンが言うであろうように「想像をふくらませてみる」だけでしょうか。