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植物: セイヨウハコヤナギvs.ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシスvs.ポプラ

グリーン・ゲイブルズの裏庭に、柳に向かい合うように反対の端に並んで生えているもう1種類の木は、セイヨウハコヤナギです。


裏庭は、一面緑におおわれ、きれいに細かなところまで手入れされ、片側には年老いた何でも知っているような大きな柳の木が並び、もう一方には上品に澄ましたようなセイヨウハコヤナギが列をなしていた。


セイヨウハコヤナギは、いわゆるポプラなのですが、これが曲者です。
『グリーン・ゲイブルズのアン』の原書では、”Lombardies”という単語で表現しているのですが、グリーン・ゲイブルズの裏庭に生えているポプラはセイヨウハコヤナギではありません。
『グリーン・ゲイブルズのアン』の”Lombardies”は、セイヨウハコヤナギではありえないのです。

ちなみに、セイヨウハコヤナギは、Populus nigra という学名の「ヨーロッパクロヤマナラシ(クロポプラ)」を、17世紀にイタリアのロンバルディアで改良した栽培品種(改良ポプラ)です。ですから、「ヨーロッパクロヤマナラシ・イタリカ (Populus nigra ‘italica’)」 と呼ぶのが正しいのですが、日常の生活の中でリンネの命名法を意識することはできませんね。そのため、このポプラは「ロンバルディー」と呼ばれていました。この「ロンバルディー」は、雄株しかないので、種子による栽培はできません。
また、品種改良をした場所から想像がつくように、この地中海気候で開発された栽培品種は、暑くて乾燥した土地に適しています。したがって、残念ながらカナダの気候には適していません。

ところが、このポプラ(ヨーロッパクロヤマナラシ・イタリカ=セイヨウハコヤナギ)は、「本物のロンバルディー(true Lombardy)」と呼ばれるようになります。
「本物」とわざわざつけて呼ばれるのは、類似種がでてきたからです。
このあらたにでてきた類似種がグリーン・ゲイブルズの裏庭に生えている「ロンバルディー」です。

カナダに育つ「ロンバルディー(Lombardies)」ポプラは、「大西洋クロポプラ(Populus nigra betulifolia)」というクロポプラの亜種とクロポプラの栽培品種である「本物のロンバルディー=セイヨウハコヤナギ」を掛け合わせた「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス(Populus nigra Plantierensis)」と呼ばれる一群の栽培品種の一つです。
「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、1884年にフランスのメスの近くで開発されました。
フランスのメスは北緯49°です。日本の最北端が北緯45°くらい、プリンス・エドワードの最北地でも北緯47°くらいですから、緯度的には十分クリアしています。ただし、メスの気候はマイルドで氷点下になることはあってもカナダのようには寒くなりませんが。
けれども、「本物のロンバルディー・ポプラ(true Lombardy)」は、湿度が高く寒冷な北西ヨーロッパには適していませんが、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、適しており、イギリスやアイルランドでは「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランチェーレンシス」を「ロンバルディー・ポプラ」と呼び生育しています。「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、セイヨウハコヤナギに似ています。ですが、雌雄異株でセイヨウハコヤナギに比べて樹形に幅があります。

それでは、グリーン・ゲイブルズの裏庭にセイヨウシロヤナギと向き合って生えている木はなんて呼べばよいのでしょうか。
「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」でしょうか。それとも定説になっている「セイヨウハコヤナギ」でしょうか。

この場合は単純に「ポプラ」良いのではないかと思います。
物語の情景をすぐに思い浮かべるためには、日本人にとっては「ポプラ」で十分でしょう。
写真を比べてみると、日本人が「ポプラ」と聞いて思い起こすのは、「セイヨウハコヤナギ」よりも、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」だと思います。

(但し、日本語のWikimedia の「セイヨウハコヤナギ」には、2012年6月現在で間違えて「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」の画像を使っています。もともと元データが間違っていたのですが、訂正されたのに気づいていないのでしょうね。このWikimedia の印象を持っている方には印象しにくいかもしれませんが。)

そして、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」も「セイヨウハコヤナギ」も外見的には似た印象があります。物語の情景を思い浮かべるにはいたずらに正確を期する必要はないと思います。
また、向かい合う木がヤナギなので「セイヨウハコヤナギ」では直観的には対比しにくいですし、文学的にも同じ言葉は使いたくないですよね。

アンならなんというでしょう?

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)