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グリーン・ゲイブルズのアン

『グリーン・ゲイブルズのアン』は、1908年に出版されたベストセラーとなっている物語です。もともとは、全ての年代の読者が楽しめるように書かれた小説だったのですが、近年は児童向け小説と見られています。モンゴメリは、ある夫婦が男の子孤児をもらうはずが何かの間違いで女の子をもらい、育てていこうと決意するという話を若いころに書き、そのメモ書きからインスピレーションを得て『グリーン・ゲイブルズのアン』を書きました。子供時代にプリンス・エドワード・アイランドの田舎に住んでいた時に経験したことも物語の製作に活かしています。『グリーン・ゲイブルズのアン』の主人公アン・シャーリーの顔は、アメリカの美術モデル、イーブリン・ネスビットを参考にしています。実際、モンゴメリは、ニュー・ヨークス・メトロポリタン・マガジンに掲載されていたイーブリン・ネスビットの写真を切り抜きフレームにいれ寝室に飾っていました。

ギルバート・ブライズなどの他の登場人物は、実在した人物を部分的に参考にしています。
モンゴメリは、日の出の時間にキャベンディッシュの畑を窓辺から見下ろしながら『グリーン・ゲイブルズのアン』を書いています。

『グリーン・ゲイブルズのアン』は出版されてから5,000万冊以上販売されています。また、世界中で子供たちの教育に使われています。

あらすじ

ノバ・スコシア州ボリングブロークの孤児アンは、子供時代を見知らぬ人の家や孤児院で過ごした後、プリンス・エドワード・アイランドにやってきます。プリンス・エドワード・アイランド州のアボンリーの農家グリーン・ゲイブルズに住む50代の女性マリラ・カスバートと60代の男性マシュー・カスバート兄妹はノバ・スコシアのある孤児院から男の子をもらい養子にし、マシューの農作業を手伝わせることにしたのですが、ある誤解から孤児院はアン・シャーリーを送り届けたのです。

アンは、利発で理解が速く、人を喜ばせたいという願いが強い、話し好きな女の子で、特に想像力が豊かでした。アンは、自分はきれいではないと思っていたのですが、実際には多少の欠点はあったもののきれいな女の子だったのです。アンの顔は非常に白く、そばかすがあり、いつも赤い髪をお下げに編んでいました。名前をたずねられると、アンはマリラにコーデリアと呼んでほしいと頼みましたが、マリラは断りました。すると、アンは、アンと呼ぶのならそのアンはANNではなくANNEのアンでEがついたアンでないといけない、「Eがついているとずっと特別だから」と頼みます。マリラは、孤児院にアンを送り返さないと言い張っていましたが、数日すると、憐れみと好奇心からアンがいてもいいと思うようになるのです。

想像力が豊かなアンは、生活に喜びを見つけ、すぐに新しい環境に適応すると、人の結びつきが強い農村で成長していきます。アンはおしゃべりな女の子で、はじめは潔癖症で義務の観念が強いマリラの注意力を散漫にしますが、内気なマシューのお気に入りになります。マリラとマシューは、アンが言う所の「心の友」だったのです。

その後の物語は田舎の学校でのアンの冒険の話です。アンは、すぐに優秀な成績を収め始めます。また、ダイアナ・バリーとの友情(ダイアナ・バリーはアンの親友、あるいはアンが言う所の胸襟を広げることができる友)、萌え始める文学に対する夢、クラスメートのギルバート・ブライズとの対抗心などです。ギルバート・ブライズは、アンが初めて学校に行ったその日にアンの赤い髪をからかいました。その悪ふざけでギルバート・ブライズはアンからその後延々と続く憎しみをすぐに買い、第28章「運の悪い百合の乙女」にいたるまで何度謝っても、アンはギルバートを許さず、とうとうギルバートのアンに対する感情は気まずいものになりアンに対して無関心になります。一方のアンは、ギルバートをそんなふうにしてしまったことを残念に思いもう憎んでいないことに気がつきますが、自からそれを認めることはできません。2人は小説の最後で友達になります。

また、昔から変わらない静かなアボンリーでアンがおこす失敗にもふれられています。アンが友達(ダイアナ、ジェーン・アンドリューズ、ルビー・ギリス)とした空想をふくらました遊びや、いじわるなパイ姉妹(ガーティーとジョシー)とのいざこざ、髪の毛を黒く染めるはずが緑に染めてしまったことのようなグリーン・ゲイブルズの家での失敗、間違ってダイアナを酔っぱらわせてしまった(ラズベリー・ジュースだと信じてリンゴ酒を飲ませた)ことなどです。

16歳の時に、アンは、ギルバートやルビー、ジョシー、ジェーン、その他の学友と一緒にクイーンズ・アカデミーに教員の資格を取りに行きます。アンは通常2年かかるコースを1年で終了し資格をとりますが、同時に英語で最優秀の成績を収めアベリー奨学金も勝ち取ります。そのおかげで、アンはノバ・スコシア州のレッドモンド・カレッジで学士を目指してさらに勉強することができるようになります。

小説の終わりの方で、マシューは自分とマリラのお金が銀行の破たんでなくなってしまったこと知り心臓発作で亡くなります。アンは、マリラとグリーン・ゲイブルズへの愛情から、アベリー奨学金をあきらめ、視力がどんどん落ちているマリラを助け家に残ることにします。アンは、一番近くで教職の空きがあるカーモディーの学校で教鞭を取り、週末にグリーン・ゲイブルズに帰ることにしようと心を決めます。ところが、ギルバート・ブライズがアボンリーの教員の職を捨て、ホワイト・サンド・スクールで教鞭をとることにし、アンが代わりにアボンリーの学校で教鞭をとりずっとグリーン・ゲイブルズにいれるようにします。この思いやりのある行為により、アンとギルバートの友情は固いものになり、アンは次の「人生の曲がり角」の後に迎える生活を心待ちにするようになります。

登場人物

  • アン・シャーリー
    想像にふけるのと話をするのが好きな赤毛のみなしご。独身の兄妹のマシュー・カスバートとマリラ・カスバートと暮らすことになる。
  • マリラ・カスバート
    アンの想像力豊かで普通でないもののしかたを何とか抑えようと努力する厳格な女性。自分のルールを決して変えようとしないが、アンを愛しユーモアのセンスや隠した優しさを見せることがある。
  • マシュー・カスバート
    マリラの兄。内気で不器用な性格だが、始めからアンを好ましく思う。マシューとアンの間には固い友情が生まれる。マシューはアンに比べるとはるかに寡黙だが、よき聞き手である。マリラがアンを育てるので、マシューにはアンに「甘く」したり、マリラが軽薄すぎると考えるかわいらしい洋服などでアンを満足させることに何の良心のとがめも感じない。
  • ダイアナ・バリー
    アンにとっては、心がつながる友であり互いにわかりあえる間柄。アンとダイアナは会った瞬間にベスト・フレンドになる。ダイアナは、グリーン・ゲイブルズの近くに住むただ一人の同年の女の子である。アンは、ダイアナには気品があり、美しく陽気で気立てのよい性格であることを素晴らしいと思っている。ダイアナはアンのような力強い想像力はないが、決して裏切ることがない友人である。
  • ギルバート・ブライズ
    ハンサムなクラスメート。アンの気を引こうとアンの髪の毛を引っぱって「ニンジン」とよんでからかった(アンが赤い髪を気にしていることには気づいていなかった)。頭にきたアンは、当時の学校でノート代わりに使っていた石版をわるほどの勢いでギルバートの頭に打ち付け、その後数年間ギルバートと関わることを一切拒否してしまう。物語の間ギルバートは何度も謝り、アンに賛嘆の念を示して見せても、アンは冷たくはねつけてしまう。しかし、ギルバートは決して友情(後には愛情)を得ることをあきらめない。物語の最後で、ギルバートがアボンリーの学校での教職の仕事を捨てアンが代わりに教員になれるようにしアンがマリラとグリーン・ゲイブルズに住めるようにしてくれた時に、アンはギルバートを許す。
  • レイチェル・リンド夫人
    マシューとマリラの隣人。アーボンリーでは一番お騒がせな人だが、普通には、悪意のない善意の人であると思われている。リンド夫人は、初めはアンのことを好きではなかったが、すぐに、このそばかす顔の孤児に熱を入れ始める。リンド夫人は、信じられないほど良く働く人で、すぐに人の手伝いをし、教会のために働くことを愛する。リンド夫人は、既婚で、10人の子どもたちを育てているが、夫のトーマス・リンドについては簡単に何カ所かで語られるものの、夫が物語の中で口を開くことはない。リンド夫人は、マシューの依頼で、アンに初めての茶色のグロリア生地の清楚なドレスを作ってもいる。
  • ミアリエル・ステイシー先生
    アンの、想像力豊かなエネルギッシュな新しい先生。ステイシー先生の暖かで人の気持ちを感じ取る性格は生徒の心をつかみ取るが、はじめ、アーボンリーの親たちの間では、進歩的でどんなことでも受け入れる姿勢をみせる教授方法に賛同を得られなかった。ステイシー先生は、アンと特別な関係を築き、アンはステイシー先生を敬慕し指導者として見る。ステイシー先生は、アンが知力と性格を伸ばすことができるようにはげまし、クイーンズ・カレッジの入学試験を受ける準備を助ける。アンは、その試験でギルバート・ブライズと主席を分け合った。
  • ジョシー・パイ
    アンのクラスメートの一人で、他の女の子みんなに嫌われている(パイ姉妹は全員嫌われている)。ジョシーは虚栄心が強い信頼できない性格で、アンの人気をねたんでいる。アンは、ジョシーに「情け容赦ない」接し方をしないように努力するが、どうしても好きにはなれない。
  • ジェーン・アンドリューズ
    クイーンズ・カレッジでのアンの学友の一人。ジェーンは飾らない分別のあり、学業は優れている。ダイアナはアンの一番の友達ではいるが、ジェーンもよき友達でいる。
  • ルービー・ギルス
    アンの友達。「年頃」の姉たちがいるので、ルービーは恋人について知っていることを友達に話すのを好む。ルービーは、長い金髪の伝統的に美人とされるタイプの女の子として描かれている。ルービーは男の子について話すのが好きである。ルービーには、ヒステリーがある。
  • アラン牧師と牧師夫人
    牧師と牧師夫人は、二人ともアンにとっては友人のような存在である。アラン牧師夫人はアンにとって一番の友人の一人となる。アラン牧師夫人は、しとやかで美しい女性として描かれているが、アンによると「これ以上もなく可愛い」人である。
  • ミニー・メイ・バリー
    ダイアナの妹でまだ赤ん坊。喉頭炎で倒れた時にアンが命を助けた。
  • バリー夫妻
    ダイアナの両親。バリー氏も農場を経営し、物語の最後の方でアンとマリラを助けるために土地をいくらか貸そうと申し出てくれる。バリー夫人は厳格で頑固な性格を持ち、自分の子どもたちに厳しく、時には、理屈が合わない決まりに従わせる。アンが間違ってダイアナを酔わせた後、バリー夫人はアンがダイアナに話すことを拒否するが、アンはミニー・メイを助けて名誉挽回し、バリー夫人も思い直す。
  • ジョセフィン・バリー
    ダイアナのおば。初めは意地の悪い性格であったが、アンの想像力に魅せられ、アンをお茶に招待し、また、非常に高価なクリスマス・プレゼントを贈るようになる。ジョセフィン・バリーとアンは、初めの本『グリーン・ゲイブルズのアン』の中で、ジョセフィン・バリーがバリー家を訪れた時に出会う。
  • フィリップス先生
    アボンリーでの最初のアンの先生。アンに嫌われている(なによりも、フィリップス先生はアンの名前[Anne]を[e]を抜かして書いてしまった)。アンが他の生徒たちと一緒に授業に遅れた時、フィリップス先生はアンだけを罰しギルバート・ブライズと座らせ、自尊心を傷つけたので、アンはその後長い間学校に行かなかった。フィリップス先生は、リンド夫人がいうように、有能な先生ではなかった。フィリップス先生は、自制力がなく、プリッシー・アンドリューズという生徒一人だけをかわいがった。だが、フィリップス先生が学校を辞める時、アンは泣いた。

続編

モンゴメリは、アン・シャーリーの物語をシリーズものとして書き続けました。アンのシリーズをアンの年齢順に並べると次のようになります。

  • グリーン・ゲイブルズのアン: (1908出版) [アンの年齢: 11~16歳]
  • アボンリーのアン: (1909出版) [アンの年齢: 16~18歳]
  • プリンス・エドワード島のアン: (1915出版) [アンの年齢: 18~22歳]
  • 風に揺れるポプラのアン: (1936出版) [アンの年齢: 22~25歳]
  • アンの夢の家: (1917出版) [アンの年齢: 25~27歳]
  • イングルサイドのアン: (1939出版) [アンの年齢: 34~40歳]
  • 虹の谷: (1919出版) [アンの年齢: 41歳]
  • イングルサイドのレイラ: (1921出版) [アンの年齢: 49~53歳]
  • ブライズ家の証言: (2009出版) [アンの年齢: —]

アン・シャーリーが主役ではない関連書籍

  • アボンリーの記録: (1912出版)
  • 続アボンリーの記録: (1920出版)

前日譚

『グリーン・ゲイブルズのアン』以前の物語を、L・M・モンゴメリの相続人の許可を得てバッジ・ウィルソンが書いています。

  • 『グリーン・ゲイブルズ以前』2008 [アンの年齢: 0-11歳]

研究

L・C・モンゴメリの相続人の許可の下、アイリーン・ガメルが『グリーン・ゲイブルズのアン』の歴史を書いています。

  • 『グリーン・ゲイブルズのアンをさがして: L・M・モンゴメリの物語とモンゴメリの古典文学』: 2008年刊 [アンの年齢: 0~40歳]

観光

モンゴメリがインスピレーションを得たグリーン・ゲイブル(緑の破風)の農家は、プリンス・エドワード・アイランド州のキャベンディッシュにあります。プリンス・エドワード・アイランド州の観光アトラクションの多くは、アンを軸に発展してきています。同州の自動車用ナンバー・プレートもアンのイメージを使っていたこともありました。『グリーン・ゲイブルズのアン』の中にでてくる「お化けの森」のヒントになったバルサム・ホローやその森も近くにあります。毎年夏には、「グリーン・ゲイブルズのアン」や「アンとギルバート」のミュージカルが同州の劇場で演じられます。

アンの人気は多くの国に広がり、『グリーン・ゲイブルズのアン』は36カ国語に訳されています。アンのファンたちの観光は、プリンス・エドワード・アイランド経済にとって重要な意味を持っています。『グリーン・ゲイブルズのアン』は日本では非常に人気があり、1952年から学校にカリキュラムに組み込まれています。そしてアンは「偶像」化されています。たくさんの恋人たちが日本からやってきてグリーン・ゲイブルズの農場がある場所で結婚式を行います。女の子の中にはアンのように見せようと赤く髪を染めお下げにしてやってきます。

『グリーン・ゲイブルズのアン』の登場人物の格好をして写真をとれる場所には、キャベンディッシュの近くのアーボンリー・テーマ・パークやニュー・ブランズウィックとプリンス・エドワード・アイランドを結ぶコンフェデレーション・ブリッジにあるキャベンディッシュ人形店があります。キャベンディッシュの写真撮影部屋の壁には、小説の登場人物の格好をした数百人の女性の写真が飾ってあります。中には数人の男性の写真もあります。

カナダ国オンタリオ州バラにある「バラ・ルーシー・モード・モンゴメリの思い出博物館」は、モンゴメリとその家族が1922年の休暇で滞在したファニー・パイクにあったモンゴメリの情報や遺産に捧げられています。モンゴメリは、この地方を小説『青い城』の舞台にし、町の名前だけディアウッドと変えました。この本だけがカナダ沿海州を舞台にしない小説です。

カナダ郵政公社は、2008年に、アンと「グリーン・ゲイブルズ」の栄誉をたたえる2種類の切手と記念切手シートを発行しています。

マーチャンダイジング

プリンス・エドワード・アイランド州中の土産店は、アン・シャーリーの小説にヒントを得た食べ物や製品を数多く提供しています。赤いお下げの髪がついた麦わら帽子やラズベリー・ジュース・ソーダはどこにでもあります。ルーシー・モード・モンゴメリは、その初めての小説で、アンが情熱一杯に言い放った「明るい赤の飲み物は大好きなの!」の言葉でラズベリー・ジュースを公式にアンの飲み物としたのです。

翻案: 映画化

  • 1919年: グリーン・ゲイブルズのアン。フランシス・マリオン脚本のサイレント映画。ウィリアム・デズモンド・テイラー監督。アン役にメアリー・マイルズ・ミンター。この映画はロストフィルムとされています。
  • 1934年: グリーン・ゲイブルズのアン。ジョージ・ニコルズ・ジュニア監督。RCAビクター音声の白黒映画。アン役にドーン・オデイ(ただし、アン・シャーリーという名の女優として宣伝)。この映画の後、ドーン・オデイは女優名をアン・シャーリーに変えています。

翻案: テレビ映画化

  • 1956年: グリーンゲイブルズのアン。テレビ用に製作。ノーマン・キャンベル監督。アン役: トビー・ターナウ。トビー・ターナウは舞台で初めてアン役を演じる。
  • 1972年: グリーン・ゲイブルズのアン。5話からなるイギリス版ミニ・シリーズ。ジョーン・クラフト監督。アン役: キム・ブラーデン。
  • 1975年: アボンリーのアン。4話からなるイギリス版ミニ・シリーズ。ジョーン・クラフト監督。アン役: キム・ブラーデン。
  • 1985年: グリーン・ゲイブルズのアン。テレビ(CBC)用に製作された4時間のミニ・シリーズ。ケビン・サリバン監督、アン役: ミーガン・フォロウズ。
  • 1987年: ディズニー・チャンネルから放映された1985年のミニ・シリーズ、アボンリーのアンの続編、グリーン・ゲイブルズのアン続編。
  • 2000年: グリーン・ゲイブルズのアン。原作に大まかにもとづいたテレビ用ミニ・シリーズとしてのアンのその後の物語。
  • 2009年: グリーン・ゲイブルズのアン。原作にもとづくテレビ用ミニ・シリーズ。新しい始まり。