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植物: オウシュウシラカンバ

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンの窓から見える景色についての続きです。


東側の窓からは、左の方の果樹畑に生えている満開の花で白くみえる桜の木と、小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキも見えたが、窓は絡みあった蔦の緑で縁どられていた。


この一文の中に描写されている植物、「桜」「カバノキ」「蔦」を順番に解説しています。
今回は、「カバノキ」です。

カバノキは少し乱暴すぎたかもしれません。
カバノキは属の名前で、カバノキ属の品種は約40種類あります。
今ままでは100種類以上の品種がある属を調べなければならなかったので、調査が容易な予感がしました。

例によって、アメリカ農務省のデータベースによると、プリンス・エドワード・アイランドに自生してるカバノキ属には6品種あります。

  • キハダカンバ
  • アメリカシラカンバ
  • オウシュウシラカンバ
  • グレーバーチ
  • ベツラ・ナナ
  • ブルー・バーチ(和名はありません。アメリカシラカンバとグレーバーチの交雑種です)

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見えるのは、「小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキ」です。
「ほっそりとした (原書では”slender”)」というイメージからかけ離れているのは、幹の直径が80cmにもなる「キハダカンバ」(樹高20m)「アメリカシラカンバ」(樹高18m)と灌木であるベツラ・ナナ(樹高1~4m)です。

すると、残るのは、オウシュウシラカンバとグレーバーチ、ブルーバーチです。
オウシュウシラカンバは樹高15~25m、幹径40cm。
グレーバーチは樹高7~9m、幹径30cm
ブルーバーチは、アメリカシラカンバとグレーバーチの交雑種で、学問的資料は不足して正確なところはわかりません。ただ、写真で見る限りは細いのですが、樹形は灌木に近いものがあり、「ほっそりとした(slender)」という表現にはふさわしくないと思われます。

さて、オウシュウシラカンバとグレーバーチ。
ここで迷いましたが、グリーン・ゲイブルズが農家であることを考えると、役に立たない木よりは価値のある木を植えるはずだと考えました。
すると、圧倒的にグレーバーチに軍配が上がったのです。
グレーバーチは害虫にも強く、高品質の材木が取れ、家具にも使い、太鼓の胴や糸巻き、薪にも使います。価値のある木なのです。

一方、オウシュウシラカンバはというと、確かに有用な木なのですが、どちらかというと農家に少し育てるような種類ではなく、森林を育て材木やパルプの原料として使われるもののようです。ただ、樹液からお酒も作れますし、また、皮をなめすのにも使われたりします。

・・・グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見える木はグレーバーチ!となるところでしたが、どんでん返しがありました。

「小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキ」

原文では、”nodding” と使われています。初めは風に揺られていると思っていたのですが、いくら細い木でも幹が揺らすような風は相当強いですね。でも、レイチェル夫人がやってくるときには風の話など全くありません。そこで、「ああ、このカバノキは樹高20mくらいで上空に強い風が吹いているのだな」くらいに思ったのですが、良く考えるとまだ座ってもいないレイチェル夫人が20mの木を見上げるにはよほど窓の近くにいるか、ずっと離れた所にカバノキが生えているはずです。でも、そのどちらも想像しにくい情景なのです。

そうこうするうちに目にとまった記述が、「オウシュウシラカンバの樹冠の枝はアーチ状で、小枝は垂れさがっている」でした。
これなら、小枝が微風に吹かれて頷くように揺れ動くことも想像できます。
なおかつ、オウシュウシラカンバは、庭の装飾用に植えられることもあるようです。美しい幹のためですね。ちなみに、英語では”silver birch”といいます。
(オウシュウシラカンバの学名は、”Betula pendula” です。もっと早く気がつくべきでした。)

これで、グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見えるカバノキはオウシュウシラカンバではないかと曲がりなりにも想像はつきましたが、肝心な物語の訳語は・・・・?

シラカンバでいいのではないかと思います。オウシュウシラカンバは日本人が良く見るシラカンバとは近似種で、見た感じも良く似ているからです。
シラカンバを思い浮かべながら物語を読み進めていくのに何の支障もないでしょう。シラカンバとシラカバはどちらでもいいようですが、そこは物語全体を考えた上での翻訳者の力量と好みに左右されそうです。

アンならなんというでしょうか?
美しいものが好きなアンはシラカンバを喜んでくれると思います!
「私はカバノキはみんな好きなの。でもシラカンバが一番好きだわ! だって白くて美しいんですもの。銀のカバノキという名も高貴で女王様のようだわ。そう思いません?」

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)