英会話クラスだより +

植物: バージニアヅタ

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンの窓から見える景色についての続きです。


東側の窓からは、左の方の果樹畑に生えている満開の花で白くみえる桜の木と、小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキも見えたが、窓は絡みあったの緑で縁どられていた。


この一文の中に描写されている植物、「桜」「カバノキ」「蔦」を順番に解説しています。

今回は、「蔦」だったのですが、原文では”a tangle of vines” としか書いていません。
正確に言うと”vine(s)” は、ツル性の植物(climbing plants) のことをいい、分類学上の植物に結び付けるのは非常に困難です。
シダ植物、裸子植物、被子植物すべてに存在し、被子植物でも単子葉植物、双子葉植物のどちらにもそれぞれの種があります。

“vine” は、もともと”grapevine” でしたから、ブドウ科のツル植物と考えるのが妥当かもしれません。
そうすると、候補には、

  • ブドウ属
  • ノブドウ属
  • ヤブガラシ属
  • ツタ属

がありますが、ヤブガラシ属はツルをあまり伸ばさないので窓を縁取るには不向きです。

また、例によってアメリカ農務省のデータベースからは、候補の中でプリンス・エドワード・アイランドで自生するツル植物は、

  • バージニアヅタ
  • アメリカブドウ

です。
(ただし、今回はヒットしないデータもあったので漏れがあるかもしれません)

アメリカブドウは栽培種のブドウの母親の様な存在で、様々なブドウを産み出しています。果樹作物として育てるべきもので、家の壁に這わせるものではありませんね。

ということで、グリーン・ゲイブルズの家の壁を這っているツル植物”vine”はバージニアヅタである確率が高いです。
バージニアヅタのイメージは日本人の大多数にとっては「蔦」で十分伝わると思われます。片仮名の方が受け入れやすければ「ツタ」で統一するのがいいかもしれませんね。

アンにとっては、部屋の窓までのびているなら、アメリカブドウの方が良かったかもしれませんね。

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: オウシュウシラカンバ

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンの窓から見える景色についての続きです。


東側の窓からは、左の方の果樹畑に生えている満開の花で白くみえる桜の木と、小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキも見えたが、窓は絡みあった蔦の緑で縁どられていた。


この一文の中に描写されている植物、「桜」「カバノキ」「蔦」を順番に解説しています。
今回は、「カバノキ」です。

カバノキは少し乱暴すぎたかもしれません。
カバノキは属の名前で、カバノキ属の品種は約40種類あります。
今ままでは100種類以上の品種がある属を調べなければならなかったので、調査が容易な予感がしました。

例によって、アメリカ農務省のデータベースによると、プリンス・エドワード・アイランドに自生してるカバノキ属には6品種あります。

  • キハダカンバ
  • アメリカシラカンバ
  • オウシュウシラカンバ
  • グレーバーチ
  • ベツラ・ナナ
  • ブルー・バーチ(和名はありません。アメリカシラカンバとグレーバーチの交雑種です)

グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見えるのは、「小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキ」です。
「ほっそりとした (原書では”slender”)」というイメージからかけ離れているのは、幹の直径が80cmにもなる「キハダカンバ」(樹高20m)「アメリカシラカンバ」(樹高18m)と灌木であるベツラ・ナナ(樹高1~4m)です。

すると、残るのは、オウシュウシラカンバとグレーバーチ、ブルーバーチです。
オウシュウシラカンバは樹高15~25m、幹径40cm。
グレーバーチは樹高7~9m、幹径30cm
ブルーバーチは、アメリカシラカンバとグレーバーチの交雑種で、学問的資料は不足して正確なところはわかりません。ただ、写真で見る限りは細いのですが、樹形は灌木に近いものがあり、「ほっそりとした(slender)」という表現にはふさわしくないと思われます。

さて、オウシュウシラカンバとグレーバーチ。
ここで迷いましたが、グリーン・ゲイブルズが農家であることを考えると、役に立たない木よりは価値のある木を植えるはずだと考えました。
すると、圧倒的にグレーバーチに軍配が上がったのです。
グレーバーチは害虫にも強く、高品質の材木が取れ、家具にも使い、太鼓の胴や糸巻き、薪にも使います。価値のある木なのです。

一方、オウシュウシラカンバはというと、確かに有用な木なのですが、どちらかというと農家に少し育てるような種類ではなく、森林を育て材木やパルプの原料として使われるもののようです。ただ、樹液からお酒も作れますし、また、皮をなめすのにも使われたりします。

・・・グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見える木はグレーバーチ!となるところでしたが、どんでん返しがありました。

「小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキ」

原文では、”nodding” と使われています。初めは風に揺られていると思っていたのですが、いくら細い木でも幹が揺らすような風は相当強いですね。でも、レイチェル夫人がやってくるときには風の話など全くありません。そこで、「ああ、このカバノキは樹高20mくらいで上空に強い風が吹いているのだな」くらいに思ったのですが、良く考えるとまだ座ってもいないレイチェル夫人が20mの木を見上げるにはよほど窓の近くにいるか、ずっと離れた所にカバノキが生えているはずです。でも、そのどちらも想像しにくい情景なのです。

そうこうするうちに目にとまった記述が、「オウシュウシラカンバの樹冠の枝はアーチ状で、小枝は垂れさがっている」でした。
これなら、小枝が微風に吹かれて頷くように揺れ動くことも想像できます。
なおかつ、オウシュウシラカンバは、庭の装飾用に植えられることもあるようです。美しい幹のためですね。ちなみに、英語では”silver birch”といいます。
(オウシュウシラカンバの学名は、”Betula pendula” です。もっと早く気がつくべきでした。)

これで、グリーン・ゲイブルズのダイニング・キッチンから見えるカバノキはオウシュウシラカンバではないかと曲がりなりにも想像はつきましたが、肝心な物語の訳語は・・・・?

シラカンバでいいのではないかと思います。オウシュウシラカンバは日本人が良く見るシラカンバとは近似種で、見た感じも良く似ているからです。
シラカンバを思い浮かべながら物語を読み進めていくのに何の支障もないでしょう。シラカンバとシラカバはどちらでもいいようですが、そこは物語全体を考えた上での翻訳者の力量と好みに左右されそうです。

アンならなんというでしょうか?
美しいものが好きなアンはシラカンバを喜んでくれると思います!
「私はカバノキはみんな好きなの。でもシラカンバが一番好きだわ! だって白くて美しいんですもの。銀のカバノキという名も高貴で女王様のようだわ。そう思いません?」

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: スミミザクラ

さて、レイチェル・リンド夫人はマシューの謎を探るため、グリーン・ゲイブルズにやってきます。
マシューの妹のマリラにマシューが出かけた理由を聞きにきたのです。
マリラはダイニング・キッチンにいたのですが、勝手知ったるリンド夫人は裏庭を通ってやってくると裏口をノックして、返事を待ってはいります。
そこで、ダイニング・キッチンから見える外の様子が描写されます。


東側の窓からは、左の方の果樹畑に生えている満開の花で白くみえるの木と、小川のそばにあるくぼ地で風に揺られるほっそりとしたカバノキも見えたが、窓は絡みあった蔦の緑で縁どられていた。


この一文の中に描写されている植物、「桜」「カバノキ」「蔦」を順番に解説します。

まずは「桜」です。

アメリカ農務省によるとプリンス・エドワード・アイランドに生育している桜は3品種あります。ちなみにサクラ属には6亜属あり合わせて約100品種が存在がします。
その中で、プリンス・エドワード・アイランドに生育している桜は次の3品種:

  • スミミザクラ
  • ピン・チェリー
  • チョーク・チェリー

です。
かなり絞り込めました。

この桜はグリーン・ゲイブルズの果樹畑に生えています。サクランボをとるためですね。
すると、ピン・チェリーが候補から消えます。

3つのサクラの木は、どれも食用に適したサクランボを実につけますが、ピン・チェリーは昔から商用の価値はありません。あくまでも、自家用にジャムやジェリーや保存食を作るのに使われます。

これに対して、チョーク・チェリーは先住民の時代から貴重な食料源でした。ジャムやジェリーやシロップに使われます。ただし苦いので、かなりの砂糖を必要とします。
スミミザクラもその実は重用されます。英語では酸っぱいチェリー(sour cherry) というのですが、スープや豚肉料理、タルト、パイなどのデザート、リキュール、ドリンクなど何でも来いです。人によっては生で食べる人もいます(すっぱいですが)。

それでは、チョーク・チェリーか、スミミザクラかという事ですが、軍配はスミミザクラに上がりそうです。
満開の花で白くみえる桜だからです。

実はチョーク・チェリーやピン・チェリーは、花が咲いても満開で木全体が白く見えることはありません。(写真では3品種とも花をつけています)
やはり、ソメイヨシノと同じサクラ亜属のスミミザクラがグリーン・ゲイブルズの果樹園のサクラでしょう。

「桜」と読んで「ソメイヨシノ」を連想してもスミミザクラから大きくかけはられることはありませんが、やはり果樹という観点から考えると、少なくとも言葉の面では「スミミザクラ」とした方が良いのかもしれません。

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: セイヨウハコヤナギvs.ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシスvs.ポプラ

グリーン・ゲイブルズの裏庭に、柳に向かい合うように反対の端に並んで生えているもう1種類の木は、セイヨウハコヤナギです。


裏庭は、一面緑におおわれ、きれいに細かなところまで手入れされ、片側には年老いた何でも知っているような大きな柳の木が並び、もう一方には上品に澄ましたようなセイヨウハコヤナギが列をなしていた。


セイヨウハコヤナギは、いわゆるポプラなのですが、これが曲者です。
『グリーン・ゲイブルズのアン』の原書では、”Lombardies”という単語で表現しているのですが、グリーン・ゲイブルズの裏庭に生えているポプラはセイヨウハコヤナギではありません。
『グリーン・ゲイブルズのアン』の”Lombardies”は、セイヨウハコヤナギではありえないのです。

ちなみに、セイヨウハコヤナギは、Populus nigra という学名の「ヨーロッパクロヤマナラシ(クロポプラ)」を、17世紀にイタリアのロンバルディアで改良した栽培品種(改良ポプラ)です。ですから、「ヨーロッパクロヤマナラシ・イタリカ (Populus nigra ‘italica’)」 と呼ぶのが正しいのですが、日常の生活の中でリンネの命名法を意識することはできませんね。そのため、このポプラは「ロンバルディー」と呼ばれていました。この「ロンバルディー」は、雄株しかないので、種子による栽培はできません。
また、品種改良をした場所から想像がつくように、この地中海気候で開発された栽培品種は、暑くて乾燥した土地に適しています。したがって、残念ながらカナダの気候には適していません。

ところが、このポプラ(ヨーロッパクロヤマナラシ・イタリカ=セイヨウハコヤナギ)は、「本物のロンバルディー(true Lombardy)」と呼ばれるようになります。
「本物」とわざわざつけて呼ばれるのは、類似種がでてきたからです。
このあらたにでてきた類似種がグリーン・ゲイブルズの裏庭に生えている「ロンバルディー」です。

カナダに育つ「ロンバルディー(Lombardies)」ポプラは、「大西洋クロポプラ(Populus nigra betulifolia)」というクロポプラの亜種とクロポプラの栽培品種である「本物のロンバルディー=セイヨウハコヤナギ」を掛け合わせた「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス(Populus nigra Plantierensis)」と呼ばれる一群の栽培品種の一つです。
「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、1884年にフランスのメスの近くで開発されました。
フランスのメスは北緯49°です。日本の最北端が北緯45°くらい、プリンス・エドワードの最北地でも北緯47°くらいですから、緯度的には十分クリアしています。ただし、メスの気候はマイルドで氷点下になることはあってもカナダのようには寒くなりませんが。
けれども、「本物のロンバルディー・ポプラ(true Lombardy)」は、湿度が高く寒冷な北西ヨーロッパには適していませんが、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、適しており、イギリスやアイルランドでは「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランチェーレンシス」を「ロンバルディー・ポプラ」と呼び生育しています。「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」は、セイヨウハコヤナギに似ています。ですが、雌雄異株でセイヨウハコヤナギに比べて樹形に幅があります。

それでは、グリーン・ゲイブルズの裏庭にセイヨウシロヤナギと向き合って生えている木はなんて呼べばよいのでしょうか。
「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」でしょうか。それとも定説になっている「セイヨウハコヤナギ」でしょうか。

この場合は単純に「ポプラ」良いのではないかと思います。
物語の情景をすぐに思い浮かべるためには、日本人にとっては「ポプラ」で十分でしょう。
写真を比べてみると、日本人が「ポプラ」と聞いて思い起こすのは、「セイヨウハコヤナギ」よりも、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」だと思います。

(但し、日本語のWikimedia の「セイヨウハコヤナギ」には、2012年6月現在で間違えて「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」の画像を使っています。もともと元データが間違っていたのですが、訂正されたのに気づいていないのでしょうね。このWikimedia の印象を持っている方には印象しにくいかもしれませんが。)

そして、「ヨーロッパクロヤマナラシ・プランティエーレンシス」も「セイヨウハコヤナギ」も外見的には似た印象があります。物語の情景を思い浮かべるにはいたずらに正確を期する必要はないと思います。
また、向かい合う木がヤナギなので「セイヨウハコヤナギ」では直観的には対比しにくいですし、文学的にも同じ言葉は使いたくないですよね。

アンならなんというでしょう?

(出版の際には他の表現と共に訂正されます)

植物: セイヨウシロヤナギ

マシューの謎の行動のために、心をかき乱されたレイチェル夫人は、真相を確かめにお隣のグリーン・ゲイブルズをたずねます。
マシューと一緒に住んでいるマリラに問いただすためです。
「問いただす」というのは、少し大げさな表現かもしれませんが、レイチェル夫人は何でも知らないと気がすまない人なのです。内心はそんな感じだったことはありそうです。

さて、グリーン・ゲイブルズに行くのに、レイチェル夫人は、初めは玄関へと続く道を歩いていましたが、近道をしてマリラの家の裏庭を通って行きます。
裏庭の様子が描写され、住人の性格がそこから読み取れます。
その裏庭の片側には柳が列をなし、反対側にはセイヨウハコヤナギが並んでいます。


裏庭は、一面緑におおわれ、きれいに細かなところまで手入れされ、片側には年老いた何でも知っているような大きなの木が並び、もう一方には上品に澄ましたようなセイヨウハコヤナギが列をなしていた。


この「柳」と「セイヨウハコヤナギ」が曲者です。

まず、「柳」です。

日本人のほとんどの人は「柳」と聞くとシダレヤナギを思い浮かべると思います。水辺に枝を幽霊のように垂れて、時々は幽霊もお伴をするあの「柳」です。このシダレヤナギは、学名を Salix babylonica といい、実はプリンス・エドワード・アイランドには生育していません。
柳はヤナギ属に属の品種は100種以上にも及びます。その中で、プリンス・エドワード・アイランドに自生しているのは、15品種だけです(アメリカ農務省のデータによる)。

グリーン・ゲイブルズの裏庭に並んでいる柳は、「年老いた何でも知っているような大きな柳」です。原文では”great patriarchal willow” ですから、どっしりした家長的な感じのする柳なのでしょう。
したがってある程度大きな柳を15品種の中から選ぶと2品種が「候補」に残ります。
クラックウィローとセイヨウシロヤナギです。どちらも、10m以上になりクラックウィローは、20mまで、セイヨウシロヤナギは、30mまで高くなります。
向かい側にそびえているセイヨウハコヤナギの樹高も20~30mだという事を考えると、ちょうどつり合う高さだということになります。
クラックウィローとセイヨウシロヤナギは幹の直径が1mにもなるので、堂々とした「家長的な威厳」を示すにはぴったりです。
残りの品種は、高いものでせいぜい10m、でなければ灌木です。(公正な記述のために: 調べきれていない品種もあります。)

それでは、クラックウィローとセイヨウシロヤナギのどちらの柳だったかというと、「セイヨウシロヤナギ」だったのではないかと思われます。
グリーン・ゲイブルズの裏庭の描写で、住人の性格がある程度読み取れると書きましたが、グリーン・ゲイブルズの住人は2人で、裏庭の木もそれぞれこの2人を投影していると思われます。
マリラは、何にでもきちんとしている人で、身なりもきちんとしています。マシューは、内気ですが心に決めたら動かないところがあり、髪の毛は肩まで垂れ、肩は少し内側に曲がっています。
「セイヨウハコヤナギ」は、まっすぐに生えるスリムな木ですから、マリラに良く似合っています。
クラックウィローとセイヨウシロヤナギのどちらが、マシューに似ているかといえば、どうみてもセイヨウシロヤナギですね。
ただ、セイヨウシロヤナギはクラックウィローに比べて列に並べにくそうなのが難点です。

謎の「セイヨウハコヤナギ」については次回解説します。

でも、これで、グリーン・ゲイブルズの裏庭には、「セイヨウハコヤナギ」の列と「セイヨウシロヤナギ」がそれぞれ列をなして両側に生えていることがわかりました。想像力を働かせすぎたでしょうか。

アンならこういうかもしれません。
「想像力を働かせたの。セイヨウハコヤナギがマリラで、セイヨウシロヤナギがマシューだなんて、なんて素敵なの。そう思いません?」

植物: フクシア・マゲラニカ

フクシアは、もともとは南米(一部は中米やポリネシア)の熱帯・亜熱帯原産の植物です。
当然、なぜカナダにそんな植物が育っているんだという疑問が起こります。
フクシア属の花は100以上の品種を誇ります。その中で、耐寒性の強いものがフクシア・マゲラニカです。

プリンス・エドワード・アイランドから大西洋をはさんだアイルランドのウエスト・コークという町は、フクシア・マゲラニカが町の花になっているほど多く自生しています。ウエスト・コークの人達は、この外来種の花は大西洋をわたって流れ着いたのだと思っています。真偽のほどはわかりませんが。
大西洋の先は、当然カナダでプリンス・エドワード・アイランドもその一部です。

そうはいっても、フクシア・マゲラニカは氷点下では生存できないようなので、カナダの冬は越せそうにはありませんが、現在の所、最有力のフクシアです。物語の中では、「フクシア」という言葉は使われてはおらず、「レディーズ・イアドロップス」と呼ばれています。貴婦人のペンダント形イアリングという意味です。そして、アイルランドのウエスト・コークの町でも「レディーズ・イアドロップス」と呼ばれているフクシアがフクシア・マゲラニカなのです。

それでは、氷点下の冬のプリンス・エドワード・アイランドに本当に咲いているのか・・・?

残念ながら、今のところはわかりません。
真実は、アンが言うであろうように「想像力で補う」しかないのでしょうか。


レイチェル・リンド夫人が住んでいるのは、ちょうどアボンリーの大通りを下って少しくぼ地になっている、ハンノキとフクシアに囲まれているところで、カスバートの森から流れ出ている小川が横切っていた。


「フクシア・マゲラニカ」は3mくらいの高さに育つ灌木ですが、霜が降りるようなところだと、その半分の高さくらいにしか育たないようです。
大人の背よりも少し低いくらいのフクシアがレイチェル夫人の住んでいたあたりを囲むように育っていたのでしょうか。

植物: スペックルド・オルダー

『グリーン・ゲイブルズのアン』の一番初めにでてくる名誉ある植物です。


レイチェル・リンド夫人が住んでいるのは、ちょうどアボンリーの大通りを下って少しくぼ地になっている、ハンノキとフクシアに囲まれているところで、カスバートの森から流れ出ている小川が横切っていた。


「ハンノキ」というのが実は「スペックルド・オルダー」です。

「ハンノキ」も「スペックルド・オルダー」も同じハンノキ属の品種なのですが、「ハンノキ」は、日本、朝鮮半島、ウスリー、満州に分布するハンノキ属で、日本では全国の山野の低地や湿地、沼に自生します。

一方、「スペックルド・オルダー」は、北米北東部に分布するハンノキ属で、プリンス・エドワード・アイランド州ではふつうにみられます。ただし、ハンノキ属の品種グレー・オルダーの亜種なので、「ハンノキ」から見ると、兄弟や姉妹ではなくて、甥や姪にあたります。

「ハンノキ」と聞いてすぐにイメージができる人は少ないと思います。
それならば、「スペックルド・オルダー」の写真を参考にしてどんな場所にレイチェル夫人が住んでいたか想像して下さい。あきらかに、「ハンノキ」とは見た目が違います。
樹高はどちらも15~20mとほぼ同じですが、「スペックルド・オルダー」は、もっとこんもりとしていますね。そんなところの近くにレイチェル夫人は住んでいました。

後の風景は、アンが言うであろうように「想像をふくらませてみる」だけでしょうか。

グリーン・ゲイブルズのアン

『グリーン・ゲイブルズのアン』は、1908年に出版されたベストセラーとなっている物語です。もともとは、全ての年代の読者が楽しめるように書かれた小説だったのですが、近年は児童向け小説と見られています。モンゴメリは、ある夫婦が男の子孤児をもらうはずが何かの間違いで女の子をもらい、育てていこうと決意するという話を若いころに書き、そのメモ書きからインスピレーションを得て『グリーン・ゲイブルズのアン』を書きました。子供時代にプリンス・エドワード・アイランドの田舎に住んでいた時に経験したことも物語の製作に活かしています。『グリーン・ゲイブルズのアン』の主人公アン・シャーリーの顔は、アメリカの美術モデル、イーブリン・ネスビットを参考にしています。実際、モンゴメリは、ニュー・ヨークス・メトロポリタン・マガジンに掲載されていたイーブリン・ネスビットの写真を切り抜きフレームにいれ寝室に飾っていました。

ギルバート・ブライズなどの他の登場人物は、実在した人物を部分的に参考にしています。
モンゴメリは、日の出の時間にキャベンディッシュの畑を窓辺から見下ろしながら『グリーン・ゲイブルズのアン』を書いています。

『グリーン・ゲイブルズのアン』は出版されてから5,000万冊以上販売されています。また、世界中で子供たちの教育に使われています。

あらすじ

ノバ・スコシア州ボリングブロークの孤児アンは、子供時代を見知らぬ人の家や孤児院で過ごした後、プリンス・エドワード・アイランドにやってきます。プリンス・エドワード・アイランド州のアボンリーの農家グリーン・ゲイブルズに住む50代の女性マリラ・カスバートと60代の男性マシュー・カスバート兄妹はノバ・スコシアのある孤児院から男の子をもらい養子にし、マシューの農作業を手伝わせることにしたのですが、ある誤解から孤児院はアン・シャーリーを送り届けたのです。

アンは、利発で理解が速く、人を喜ばせたいという願いが強い、話し好きな女の子で、特に想像力が豊かでした。アンは、自分はきれいではないと思っていたのですが、実際には多少の欠点はあったもののきれいな女の子だったのです。アンの顔は非常に白く、そばかすがあり、いつも赤い髪をお下げに編んでいました。名前をたずねられると、アンはマリラにコーデリアと呼んでほしいと頼みましたが、マリラは断りました。すると、アンは、アンと呼ぶのならそのアンはANNではなくANNEのアンでEがついたアンでないといけない、「Eがついているとずっと特別だから」と頼みます。マリラは、孤児院にアンを送り返さないと言い張っていましたが、数日すると、憐れみと好奇心からアンがいてもいいと思うようになるのです。

想像力が豊かなアンは、生活に喜びを見つけ、すぐに新しい環境に適応すると、人の結びつきが強い農村で成長していきます。アンはおしゃべりな女の子で、はじめは潔癖症で義務の観念が強いマリラの注意力を散漫にしますが、内気なマシューのお気に入りになります。マリラとマシューは、アンが言う所の「心の友」だったのです。

その後の物語は田舎の学校でのアンの冒険の話です。アンは、すぐに優秀な成績を収め始めます。また、ダイアナ・バリーとの友情(ダイアナ・バリーはアンの親友、あるいはアンが言う所の胸襟を広げることができる友)、萌え始める文学に対する夢、クラスメートのギルバート・ブライズとの対抗心などです。ギルバート・ブライズは、アンが初めて学校に行ったその日にアンの赤い髪をからかいました。その悪ふざけでギルバート・ブライズはアンからその後延々と続く憎しみをすぐに買い、第28章「運の悪い百合の乙女」にいたるまで何度謝っても、アンはギルバートを許さず、とうとうギルバートのアンに対する感情は気まずいものになりアンに対して無関心になります。一方のアンは、ギルバートをそんなふうにしてしまったことを残念に思いもう憎んでいないことに気がつきますが、自からそれを認めることはできません。2人は小説の最後で友達になります。

また、昔から変わらない静かなアボンリーでアンがおこす失敗にもふれられています。アンが友達(ダイアナ、ジェーン・アンドリューズ、ルビー・ギリス)とした空想をふくらました遊びや、いじわるなパイ姉妹(ガーティーとジョシー)とのいざこざ、髪の毛を黒く染めるはずが緑に染めてしまったことのようなグリーン・ゲイブルズの家での失敗、間違ってダイアナを酔っぱらわせてしまった(ラズベリー・ジュースだと信じてリンゴ酒を飲ませた)ことなどです。

16歳の時に、アンは、ギルバートやルビー、ジョシー、ジェーン、その他の学友と一緒にクイーンズ・アカデミーに教員の資格を取りに行きます。アンは通常2年かかるコースを1年で終了し資格をとりますが、同時に英語で最優秀の成績を収めアベリー奨学金も勝ち取ります。そのおかげで、アンはノバ・スコシア州のレッドモンド・カレッジで学士を目指してさらに勉強することができるようになります。

小説の終わりの方で、マシューは自分とマリラのお金が銀行の破たんでなくなってしまったこと知り心臓発作で亡くなります。アンは、マリラとグリーン・ゲイブルズへの愛情から、アベリー奨学金をあきらめ、視力がどんどん落ちているマリラを助け家に残ることにします。アンは、一番近くで教職の空きがあるカーモディーの学校で教鞭を取り、週末にグリーン・ゲイブルズに帰ることにしようと心を決めます。ところが、ギルバート・ブライズがアボンリーの教員の職を捨て、ホワイト・サンド・スクールで教鞭をとることにし、アンが代わりにアボンリーの学校で教鞭をとりずっとグリーン・ゲイブルズにいれるようにします。この思いやりのある行為により、アンとギルバートの友情は固いものになり、アンは次の「人生の曲がり角」の後に迎える生活を心待ちにするようになります。

登場人物

  • アン・シャーリー
    想像にふけるのと話をするのが好きな赤毛のみなしご。独身の兄妹のマシュー・カスバートとマリラ・カスバートと暮らすことになる。
  • マリラ・カスバート
    アンの想像力豊かで普通でないもののしかたを何とか抑えようと努力する厳格な女性。自分のルールを決して変えようとしないが、アンを愛しユーモアのセンスや隠した優しさを見せることがある。
  • マシュー・カスバート
    マリラの兄。内気で不器用な性格だが、始めからアンを好ましく思う。マシューとアンの間には固い友情が生まれる。マシューはアンに比べるとはるかに寡黙だが、よき聞き手である。マリラがアンを育てるので、マシューにはアンに「甘く」したり、マリラが軽薄すぎると考えるかわいらしい洋服などでアンを満足させることに何の良心のとがめも感じない。
  • ダイアナ・バリー
    アンにとっては、心がつながる友であり互いにわかりあえる間柄。アンとダイアナは会った瞬間にベスト・フレンドになる。ダイアナは、グリーン・ゲイブルズの近くに住むただ一人の同年の女の子である。アンは、ダイアナには気品があり、美しく陽気で気立てのよい性格であることを素晴らしいと思っている。ダイアナはアンのような力強い想像力はないが、決して裏切ることがない友人である。
  • ギルバート・ブライズ
    ハンサムなクラスメート。アンの気を引こうとアンの髪の毛を引っぱって「ニンジン」とよんでからかった(アンが赤い髪を気にしていることには気づいていなかった)。頭にきたアンは、当時の学校でノート代わりに使っていた石版をわるほどの勢いでギルバートの頭に打ち付け、その後数年間ギルバートと関わることを一切拒否してしまう。物語の間ギルバートは何度も謝り、アンに賛嘆の念を示して見せても、アンは冷たくはねつけてしまう。しかし、ギルバートは決して友情(後には愛情)を得ることをあきらめない。物語の最後で、ギルバートがアボンリーの学校での教職の仕事を捨てアンが代わりに教員になれるようにしアンがマリラとグリーン・ゲイブルズに住めるようにしてくれた時に、アンはギルバートを許す。
  • レイチェル・リンド夫人
    マシューとマリラの隣人。アーボンリーでは一番お騒がせな人だが、普通には、悪意のない善意の人であると思われている。リンド夫人は、初めはアンのことを好きではなかったが、すぐに、このそばかす顔の孤児に熱を入れ始める。リンド夫人は、信じられないほど良く働く人で、すぐに人の手伝いをし、教会のために働くことを愛する。リンド夫人は、既婚で、10人の子どもたちを育てているが、夫のトーマス・リンドについては簡単に何カ所かで語られるものの、夫が物語の中で口を開くことはない。リンド夫人は、マシューの依頼で、アンに初めての茶色のグロリア生地の清楚なドレスを作ってもいる。
  • ミアリエル・ステイシー先生
    アンの、想像力豊かなエネルギッシュな新しい先生。ステイシー先生の暖かで人の気持ちを感じ取る性格は生徒の心をつかみ取るが、はじめ、アーボンリーの親たちの間では、進歩的でどんなことでも受け入れる姿勢をみせる教授方法に賛同を得られなかった。ステイシー先生は、アンと特別な関係を築き、アンはステイシー先生を敬慕し指導者として見る。ステイシー先生は、アンが知力と性格を伸ばすことができるようにはげまし、クイーンズ・カレッジの入学試験を受ける準備を助ける。アンは、その試験でギルバート・ブライズと主席を分け合った。
  • ジョシー・パイ
    アンのクラスメートの一人で、他の女の子みんなに嫌われている(パイ姉妹は全員嫌われている)。ジョシーは虚栄心が強い信頼できない性格で、アンの人気をねたんでいる。アンは、ジョシーに「情け容赦ない」接し方をしないように努力するが、どうしても好きにはなれない。
  • ジェーン・アンドリューズ
    クイーンズ・カレッジでのアンの学友の一人。ジェーンは飾らない分別のあり、学業は優れている。ダイアナはアンの一番の友達ではいるが、ジェーンもよき友達でいる。
  • ルービー・ギルス
    アンの友達。「年頃」の姉たちがいるので、ルービーは恋人について知っていることを友達に話すのを好む。ルービーは、長い金髪の伝統的に美人とされるタイプの女の子として描かれている。ルービーは男の子について話すのが好きである。ルービーには、ヒステリーがある。
  • アラン牧師と牧師夫人
    牧師と牧師夫人は、二人ともアンにとっては友人のような存在である。アラン牧師夫人はアンにとって一番の友人の一人となる。アラン牧師夫人は、しとやかで美しい女性として描かれているが、アンによると「これ以上もなく可愛い」人である。
  • ミニー・メイ・バリー
    ダイアナの妹でまだ赤ん坊。喉頭炎で倒れた時にアンが命を助けた。
  • バリー夫妻
    ダイアナの両親。バリー氏も農場を経営し、物語の最後の方でアンとマリラを助けるために土地をいくらか貸そうと申し出てくれる。バリー夫人は厳格で頑固な性格を持ち、自分の子どもたちに厳しく、時には、理屈が合わない決まりに従わせる。アンが間違ってダイアナを酔わせた後、バリー夫人はアンがダイアナに話すことを拒否するが、アンはミニー・メイを助けて名誉挽回し、バリー夫人も思い直す。
  • ジョセフィン・バリー
    ダイアナのおば。初めは意地の悪い性格であったが、アンの想像力に魅せられ、アンをお茶に招待し、また、非常に高価なクリスマス・プレゼントを贈るようになる。ジョセフィン・バリーとアンは、初めの本『グリーン・ゲイブルズのアン』の中で、ジョセフィン・バリーがバリー家を訪れた時に出会う。
  • フィリップス先生
    アボンリーでの最初のアンの先生。アンに嫌われている(なによりも、フィリップス先生はアンの名前[Anne]を[e]を抜かして書いてしまった)。アンが他の生徒たちと一緒に授業に遅れた時、フィリップス先生はアンだけを罰しギルバート・ブライズと座らせ、自尊心を傷つけたので、アンはその後長い間学校に行かなかった。フィリップス先生は、リンド夫人がいうように、有能な先生ではなかった。フィリップス先生は、自制力がなく、プリッシー・アンドリューズという生徒一人だけをかわいがった。だが、フィリップス先生が学校を辞める時、アンは泣いた。